前回は、
「犬や猫にも認知症がありますよ!」「早期発見、早期治療が大切ですよ!」とお伝えしましたが、
老化と認知症の違いとは、どこにあるでしょう?
認知症の一番のリスクファクターは
加齢です。
そのために認知症と老化では初期の段階では区別が難しくなります。
しかし、
認知症では脳細胞も神経細胞も両方障害を受けてしまい、今まで覚えていたものを全て忘れてしまいますが、
老化では脳細胞は減少していますが、神経細胞が頑張っているので記憶をひきだすのに時間がかかっても覚えています。
この
神経細胞へのダメージを減らすことが治療の基本になります。
神経細胞がダメージを受けるのは、βアミロイドというタンパク質のゴミのようなものが神経細胞に付着する為におこります。
その他にもストレスや活性酸素なども神経細胞のダメージを加速させます。
・βアミロイドは、高血圧やコレストロールの増加(肥満や偏った食事)で作りやすくなります。
・ストレスとは、足腰が弱って足元がすべる事であったり、視力が落ちているので、障害物に気づかずぶつかったり、引越しや部屋の模様替えなどで慣れていた環境と変わることなど、できた事ができなくなることや不安になっているのに、排泄の失敗などで怒られたりすることなどなど、心の叫びがより認知症を進めます。
・加齢に伴い、活性酸素を処理する能力が低下するので、抗酸化作用の食事やビタミン(C、E)、DHAなどを食事やサプリでとることも有効です。酸化ストレスによる細胞障害説。
(活性酸素とは、細胞が酸素を利用してエネルギー作る過程で副産物として作られるものです。この活性酸素が体内でタンパク質や脂肪などと反応して変性してしまうことがあると言われています。→酸化障害。りんごを切った断面が酸化により黒ずんでいく変化や鉄が錆びる変化も酸化による変化です。)
もう一つの対策は、神経細胞を活性化させていくことです。
「もう、年だから静かにじっと見守ろう」は、脳の神経細胞にとっては、
一番よくない事です。
先にストレスは、認知症を進めると書きましたが、刺激が全くないのもよくないです。
適度な運動やトレーニング
も良い刺激になります。そしてマッサージやアロマなども精神的に安定させて、神経細胞を活性化します。
認知症は、重度に進んでしまうと脳が萎縮してしまい、脳細胞も神経の伝達もできなくなってしまいます。
その為に、理論だった言い方で『
ダメなことを正してやろう」としても、マイナスな事ばかりでプラスになることはありません。
昔は理解できた事でも記憶からなくなってしまっているのです。
人と動物がお互いに気持ち良い時間を過ごす事を目的に頑張れれば一番いいことだと思います。
先日、動物臨床医学会で
犬の認知機能不全症症候群(認知症)について話をきいてきました。
今まで加齢により、だんだん耳が遠くなってきた、歩き方がおかしい、ずーっと寝ている、夜中におきるようになるなど老化による変化を「年だね」とか「人の痴呆みたいだね」と言っていた事を、
「認知症の疑いがあります、検査をしてみましょう」または
「認知症の症状がでてきているから治療をしましょう」
に変えていく事がこれから必要になりますよ、または、早期に発見することが大切ですよ、と言った話でした。
では、なぜ、認知症の検査や治療が必要なのか?
それは、動物も高齢化が進み脳の老化も進んでいきます。また、その老化による変化が何もしないでそのまま見届ける事と、環境の修正や行動の修正、栄養的介入と薬物療法をする事で、認知症の症状の進行を送らせる事ができることが分かってきました。
認知症は、脳が萎縮して症状がでるために、完全に完治する事(脳を元の状態できない)ができない事と
重度に進行すると昼と夜が逆転してしまい、更に夜泣きを延々と続けることが認知症の最終ステージになります。
この段階までくると飼い主さんは夜な夜なつきっきりになり、睡眠不足になり近所への迷惑からストレスも大変なものになってしまいます。そこまで症状が進んでしまう前に、認知症について理解をしておく事が早期発につながっていきます。
認知症の症状は、12歳で約3割、16歳で7割近くが1つ以上の認知低下の兆候を示すと言われています。
猫でも15歳以上で約5割みられます。
私たち動物病院も若いときから健康について、病気について、高齢化による問題などホームドクターとして話をしたり、相談しやすい関係を築く事が大切だと感じました。
犬痴呆(認知症)の診断基準100点法をのせていますので、採点してみてください。
更にこの診断基準プラス時間の経過も考えると、より症状の進行ぐあいが分かります。
例えば、後退行動の「狭い所に入りたがる」も月に一回みられたのが、週に2〜3回、ほぼ毎日などおかしい状態がみられる頻度も大事に評価ポイントになります。